インターネットとモノをつなぐIoT
近年、工場や物流など様々な産業分野において「IoT」という言葉が使われるようになりました。
IoT(Internet of Things)とは、PCなどに限らず、家電や工場内機器などあらゆるモノをインターネットに接続させ、お互いに情報をやり取りするという「モノのインターネット」のことです。
IoTでは、モノが生み出すデータをインターネットのクラウド上で蓄積・解析することで、モノを最適化することができるといわれています。
特に製造業の分野においては、人工知能を取り入れたプラットフォームの導入により、生産性の向上が期待できます。
IoTの問題点を解決する「エッジコンピューティング」
IoT活用のカギになるのは、データを蓄積するクラウドとその経路であるインターネットですが、実はある問題点が指摘されています。
スマートフォンの急速な普及や、IoTの活用が本格化したことにより、クラウド上に送られるデータ量が増大し、ネットワークやクラウドに過大な負荷がかかっているのです。
その結果、クラウドでのデータ処理が遅延してしまい、IoT導入のメリットである「情報のリアルタイム性」が損なわれてしまいます。
このような課題を解決するための方法として、現在注目されているのが「エッジコンピューティング」です。
今回は、エッジコンピューティングの概要とメリット・デメリット、そして活用が期待される分野・サービスについて、分かりやすく解説していきたいと思います。
データ処理の分担でリアルタイム性を維持
「エッジ(edge)」とは、英語で「端」のことです。
モノが生み出すすべてのデータをクラウドに送って処理するのではなく、「現場(=エッジ)」でできる限りのデータ処理を行い、必要なデータのみをクラウドに送って処理するという考え方が「エッジコンピューティング」です。
クラウドにデータを集中させるのではなく、エッジ側に分散させてデータの蓄積・解析を行うことで、データ処理の遅延を防ぐことができます。
その結果、情報のリアルタイム性を維持することができるのです。また、遠く離れたクラウドにアクセスせずに、デバイスの近くでデータを処理するため、応答速度を高めることができるというメリットもあります。
エッジコンピューティング導入にデメリットはあるのか?
トラフィックの混雑解消、そして迅速な対応の実現につながるエッジコンピューティングですが、デメリットも存在しています。
一つは、「一部情報の消失」です。
デバイスに近い部分でデータ処理を行い、重要性の高い情報をクラウドに送信するため、他の情報については消失してしまうことになります。
機械学習やデータ活用の観点から考えれば、それらの情報が必要だったという可能性も捨てきれないため、注意しなければなりません。
二つ目は、コストの増加です。エッジコンピューティングの導入には、サーバーの増設や維持・管理などのコストがかかります。
このコストに見合うビジネスモデルを生み出せるかがカギになるでしょう。
エッジコンピューティングが活用されるシーンとは?
次に、エッジコンピューティングの活用が期待される分野・サービスをご紹介していきます。
一つ目は、自動車の自動運転です。自動車のような移動物体が周りの状況を把握して対処しようとすると、膨大な量のデータを処理する必要があります。
このような場面で、データ処理が遅延してしまうと、交通事故を招くおそれがあります。
そのため、周囲の状況を的確に把握して迅速に判断しなければならない自動運転においては、エッジコンピューティングの技術が必要になります。
二つ目は、画像解析サービスです。
店頭や街頭に設置されている監視カメラや、人物行動分析サービスといった画像解析サービスは、膨大な量の画像を扱うため、エッジコンピューティングが有用です。
三つ目は、エンターテインメント分野です。
AR(Augmented Reality:拡張現実)や、オンラインゲーム、オンデマンド動画配信などでは、データが遅延してしまえばユーザー体験への悪影響が及びます。快適なサービスを実現させるために、エッジコンピューティングの技術が役立ちます。
社会を変えるエッジコンピューティング
エッジコンピューティングとその活用場面について解説してきましたが、いかがだったでしょうか?
データ処理を分担することでリアルタイム性を維持するエッジコンピューティングは、これからの産業発展に不可欠な技術であることがお分かりいただけたと思います。
IoTが急速に普及する今、エッジコンピューティングの重要性はますます高まっています。
エッジコンピューティングのメリット・デメリットを考慮しながらシステムを構築していくことで、様々な分野の業務・サービスがさらに円滑化することが期待されます。
クラウドサービスが一般的に利用される現代において、「データ量の爆発的な増加に伴うリアルタイム性の低下」という課題を解決しうるエッジコンピューティングには、これからも注目が集まるでしょう。